愛情の鎖


私は振り返ると、拳銃をこめかみに当てたままコウさんを睨んだ。

気付けば彼の姿は3メートル程の距離にあり、落ち着いていた心臓が急に慌ただしく動き出す。


「どうせならその遊びに俺もまぜてくれよ」

「なに、バカなことを言って……」

「バカなのはお前だろ?」


一喝されて、「っ……」と喉が詰まる。
コウさんが全てを見透かしたように視線を向けるから、思わず視線が揺らいでしまう。


「あの男と何かあったのか?正直に言え。悪いが俺は回りくどいやり方は嫌いだ。この際はっきりと聞かせてもらう。
もしかして、そいつで俺を殺してこいとでも言われたか?それを条件に家族を助けてやるって」

「なっ、どうし……」

「図星か」


まさかの発言にコウさんを凝視した。

まるでさっきの宗一郎さんとのやり取りを全て知っているかのような台詞。

拳銃を握る手が思わず震える。

たまらず息を飲むと、「ちっ…」と続けざまコウさんの呆れたような嘆きが落とされ、私との距離を何でもないかのように詰めてくる。


「梨央、こっちに来い。帰るぞ」

「やっ、やだ!」


私は焦って後ろに一歩下がる。だけどすぐ後ろには行くてを省くようにガッチリとフェンスが邪魔をする。

もう、これ以上下がれない。

そう切羽詰まった時、あろうことか自分の向けていた拳銃をこめかみから外し、それをそのまま目の前のコウさんに向かって突き出した。