それは私がいつも口ずさんでいる曲、アメイジング・グレイスだった。
右手に拳銃持ち、今にも消えそうな声でそれを歌いあげると何故か「ふっ…」と、微かな笑が込み上げた。
そしてもう一度静寂の空を見上げた。
最後にこの景色が見れて良かった。
最後に此処で、人生の終わりを迎えられることができて満足だ。
素直にそう思った。
私は右手をそっと上げると、持っていた拳銃の先端を他の誰でもない自分のこめかみに当てた。
これで、いい。
もう何も考えたくない。
全てがもうどうでもよくなってしまった。
どうせあの人から逃げられないのなら、私は自らこの命を絶ちたいと思った。
どうせ家族を救えないのなら、
自分の大切な人をこの手で殺すぐらいなら、いっそ自分が死んだ方がいい。
喜んでこの命を終わりにしたい。そう切実に思えたのだ。



