愛情の鎖


つまり、コウさんを、

これで彼を殺してこいということ。

この拳銃で、彼を。私が彼を始末するっていう意味だ。



「…ムリ……、

できません……」


怯えてうずくまる私の目の前で、宗一郎さんの顔色が冷たさを増していく。
彼を取り巻く空気が恐ろしいほどの殺気が入り交じっていくのが分かる。


「ほら、これを持ってごらん」

「イヤっ」

「いいから持つんだ」


今までとはガラリと違う低い声。

ビクリと体を震わせる先には凶器にも似た宗一郎さんの刺すような瞳。


「これは命令だ。俺と別れたいならこの条件は確実にのんでもらう。家族を守りたいんだろ?」

「…っ……!」

「大丈夫、梨央君ならできるよ。俺を見捨てて家族の元へ帰るんだ。これぐらいの代償は受けて当然だろう?

それに最初は皆そうだ。これを見た瞬間誰もが顔色を変える。特に君みたいに今まで綺麗な場所でしかいなかった君なら尚更だろう。だけどそんな恐怖は初めのうちだ。次第に慣れる。むしろこの感覚を知ったら意外と病み付きになるかもしれないよ」



狂ってる……

その言葉を聞いて激しい胸の痛みに襲われた。次第に自分の顔が苦痛の表情に変わっていく。