愛情の鎖


「もう、あなたの言いなりにはなりたくない。お願いだから私を解放してください」


それが精一杯の私の願いだった。

例えそれで今より辛い思いをしたって構わない。

もう一度深く頭を下げると、宗一郎さんの真っ直ぐな視線が強く突き刺さった。

そして少しの沈黙のあと再び目の前から手が伸びてきて、顎を捕まれた私は下げていた顔をゆっくり上げられた。


「分かった。そんなに梨央が言うのなら君の望みを叶えてあげてもいい」

「えっ……」

「元々留理子ともそう言う約束だった。梨央がそんなに俺から離れたいならしょうがない。好きにすればいい」


それって……

本当に?思わず目を見開けば、宗一郎さんの冷たい視線と重なりあった。

そしてあっと油断した瞬間、ふいに感じた唇の軽い衝撃。

それが宗一郎さんの唇だと気づいた時には、整った鼻筋が私の鼻をかすめ、視界からゆっくり遠退いていく。