愛情の鎖


たまらず体を強ばらせると、宗一郎さんの手が私の頭をそっと撫でた。


「君は今までよくやってくれた。俺の言うことを忠実に守り、俺の側から逃げなかった。初めてだよ、こんな素直で従順な女を見るのは……」

「……っ……」

「実に楽しかった。梨央、君は留理子とは違う。他の女とも違う。彼女達のように俺をあっさり見捨てたりはしなかったからね」

「それはっ……」


お金に支配されてたから。家族を守りたい一心だったからだ。好き好んでこんな所に居たわけじゃない。


「だって…、あなたが怖かったから……」

そう口にすれば、今までの3年間のやりとりが鮮明に甦ってくる。

澤田宗一郎、彼が何よりも恐怖で怖かった。
そう頭の中で思った直後、私は震える手で彼の胸を押し返した。


「あなたが好きだったわけじゃ、ない。ずっと苦痛だった。それを作り笑いで隠してただけ……」


震えそうな声を押し殺して本音を言えば、彼の冷淡な瞳がよりいっそう細められる。

その眼差しを前にしてただ、目の前の恐怖に体が金縛りにあったように動けなくなる。