愛情の鎖


恐る恐る顔を上げると、無表情でこっちを見ている宗一郎さんと目が合った。
まるで喜怒哀楽を感じない、むしろ感情を無くしたような冷酷な瞳だった。

途端ヒヤリとした汗が浮かぶと、突然宗一郎さんが「ふっ…」と鼻から息をついた。そして私を小馬鹿にしたような冷めた表情でニヤリと口の端を上げたのだ。


「梨央、君の本心が聞けて嬉しいよ」


そしてゆっくり立ち上がり、恐ろしいほどの笑顔を張り付け私の方へと歩み寄ってくる。


「初めて、かな?君が結婚してからこんなに感情的になるのは……」

「えっ……」

「何て言うか新鮮だ。怒った顔も可愛いよ」


宗一郎さんの手が伸びてくる。至近距離で、彼の指先が私の頬へと触れようとした瞬間、思わず悪寒が走り私は咄嗟に後ろに後ずさってしまった。

ヨロヨロと目の前の恐怖から逃げるようにただ、足が後ろでに下がる。