愛情の鎖


「最初に約束しましたよね?私が宗一郎さんと結婚する代わりに家族には手は出さないって、中園家を助けてくれるって、なのにっ……」

「梨央、君は何か勘違いしてるんじゃないの?」


宗一郎さんがコーヒーを一口飲み終えると、私の言葉をゆっくりと遮った。
冷静に、私の怒りなんか何でもないかのような柔らかい口調で。


「俺は彼女に一度だって無理強いはしたつもりはない。むしろ近寄ってきたのは留理子からだ。俺が冗談半分で言った言葉を真に受けて、自分から服を脱いでお願いしたんだよ」

「なっ……」

「それに俺は君と結婚してからちゃんと中園家を救ったじゃないか、借金のもチャラにしてあげてお父さんの会社も家も今じゃ元通り、なんの問題もないよね。それなのに侵害だな…」


そう言って宗一郎さんはもう一口コーヒーを飲み、少し呆れたような顔付きになった。


「君のお母さんもなかなかの曲者だね。もしかしたら君を助けたいって言うのは口実で、本当は俺に構って欲しかっただけかもしれないよ。昔を思い出して少々羽目を外したかっただけかもしれないし……」