愛情の鎖


「きっと彼女のことだ。泣き続けてまともな話し合いなんて出来なかったんじゃないの?」

「えっ……」

「留理子は泣き虫だからね。昔からそうだった。彼女はああ見えて涙もろいから」


宗一郎さんがカップを両手にもってダイニングテーブルの上に置く。その姿がやけに鼻について私は思わず眉を寄せた。



「あの…、約束が違うんじゃないですか?」


彼が母の名前をあたり前のように呼んだことで再び怒りのスイッチが入った。

留理子って……

彼から母の名前を聞くことがこんなに不快なことだとは思わなかった。


「どうして母を…、もう母と会うのはやめてください!」


私が犠牲になることで家族を救えてると思っていた。なのに母までもが苦しめられてたなんて。
これじゃあ救えるどころかより家族が崩壊してしまう。


「もうこれ以上私の家族に手を出さないでください!」


私は視線を鋭くして言った。

いつも彼には遠慮ばかりしてきたけれど、今日ばかりは言いたいことを言わせてもらう。