「それから少ししてからよ。宗一郎君が母方の祖父に引き取られたって聞いたのは」
「……えっ?」
「その時九州にいた友達からそれとなく聞いたことなんだけど……」
そう言ってその時の内容を語る母の言葉に真剣に耳を傾けると、再び軽い衝撃を受けた。
母と別れてから宗一郎さんの母親は当時付き合ってた男性と突然失踪してしまったらしい。
元々母親は仕事の掛け持ちでほとんど家には帰ってこなかったという。
そしてその後すぐ母方の祖父に引き取られた家は、今彼が頭をしている澤田組。
そこからの彼の人生は聞かなくても何となく想像がつくような気がした。
きっと彼はこの世界に身を沈めることで、今の澤田宗一郎という人格を作り上げてきたのだ。
激しくうごめく憎悪と供に……
それまでの彼の状況は何となく分かったけど、やっぱり宗一郎さんのことが理解できない。
母とそんな深い繋がりがあったことを知り、私はますます複雑な心境に混乱するだけだった。



