愛情の鎖


自由のない、縛られた人生なんて苦痛で息苦しいだけだもん。



「……でも、それですんなりと別れられたの?」


それがなにより疑問だった。

あの宗一郎さん。別れて欲しいと言われてそう簡単に納得するだろうか?

そんな眼差しを悟ったのか、母はそれに答えるように弱々しく私を見た。


「別れを告げた次の日に彼に内緒で家を出たの」

「えっ……」

「元々高校を卒業したらこっちの専門学校に通うために上京が決まってたの。だから急きょ日にちを早めて彼から逃げるようにこっちに引っ越してきたの。ちょうどその時母方の従姉妹がこっちで看護婦をしててね、新しい住居が決まるまでの間その人に少しだけお世話になっていたの」


そっか、確か母は昔看護師になるために九州から東京に上京したと言っていた。

もともとこっちの大きな病院で看護師として働くのが夢だと言っていた母。

それを理由に宗一郎さんから離れるのはちょうどいい理由だったのかもしれないけれど…