愛情の鎖


それからというもの何故か頻繁に屋上に顔を出すようになったコウさんは何かと私にちょっかいをかけてくるようになった。


名前は確か晃一。

フルネームは分からない。

年齢も、何の仕事をしてるのかとかも私は一切知らない。

別に聞こうとも思わないし、彼のプライベートに正直足を踏み込みたいとも思わない。

聞いたところで私の人生が変わるわけではないし、あの人から逃げられるわけでもないのだから…

そして、彼もまた私のことを深く聞いたりはしてこないからとても楽で、ゆるい間柄を満喫している。



「明日は雨か……」


気だるそうに煙を吐き出したコウさん。

ベンチからモデル並みに長い足を投げ出しながらポツリと呟く姿はお世辞にもまっとうな人種とは思えない。


「コウさんも雨嫌いなの?」

「まぁな」

「へ~以外。男の人でもそういうこと思うんだ」


彼とこんな風に普通に話せるようになるまでまるっと2ヶ月はかかったと思う。

宗一郎さんと出会ってから人一倍警戒心が強くなった私。

すぐに人を信用できなくなったし、人と深く付き合うことを極力避けたいと思ってるのが本音だからだ。