愛情の鎖


「いや、知らない奴らだ」

「な〜んだ。だったらもう時間がないから行こう!ほら、早く!」


2人がごく自然な態度で私達から背を向ける。

さすがにそんな2人を見て翔太は何も言わなかった。

遠ざかっていくそんな背中を見送ると、私の心臓はすでに20才ぐらい、いいや30才ぐらい老け込んだ気分だった。



「ちっ、なんだ女連れかよ……」



本当勘弁してほしい……

吐き出されたその言葉に私の立場は素早く形勢逆転。隣の翔太を思いっきり睨み付けた。


「だから言ったでしょ?っとに、あんたって奴は事情も知らないくせに勢いまかせに喧嘩ふってんじゃないわよ!」

「……いや、俺はてっきり姐さんがあの男にナンパでもされてるのかと……」

「そんなわけないでしょ!変な妄想はやめてよね。いい加減もっと大人の対応を覚えなさい!」

「…はぁ……」


すんません。そう言って頭の後ろをかいた翔太に少なからず私の心臓は罪悪感でバクバクと踊っていた。

だってナンパどころか、さっきまで思いっきり彼にちょっかいをかけられていたのだから……


「つーか、本当何もされてないっすよね?」

「当たり前でしょ!」


だんだんと嘘が上手くなっていく。

私も彼らのように少しは肝が据わってきたのだろうか?

そう思いながら、私は誰にも気付かれないようにホッとため息。どっと疲れきった思いだった。