愛情の鎖


「宗一郎さんのお知り合いですか?」

「は?」


一応、念の為そうたどたどしく声をかけた私は彼のそんな反応を見てすぐに後悔をした。


「いえ……何でもないです」


何だか異様なオーラを感じる。

そして怖い。宗一郎さんも近寄りにくい雰囲気を醸し出しているけれど、それとはまた違う種類の例えようが難しい怖さだと思った。

だから私はその場を去ろうと1メートルほど離れた彼に軽く会釈をしてそそくさと背を向けた。

「おい……」と、呼びとめられる言葉に無視をして…



それが、コウさんとの出会い。

初めて会話を交わした瞬間だった。



この時、彼がどうして私に声をかけてきたのか分からなかった。

だけど、その疑問はすぐに解決することになった。

なぜなら彼は隣の部屋の住人。この日このマンションに引っ越してきたお隣さんだったからだ。

それを私が知ったのはそれから3日後のことで。

コウさんが再び屋上へと現われたことがきっかけで、そんな彼との奇妙な隣人付き合いがなんとなくスタートしてしまったのだ。