愛情の鎖


私の所まで来た翔太の視線がすぐ、隣のコウさんへと向けられた。


「あの、そいつは……?」


言いながら目付きを鋭いものに変えていく。

その瞬間私はドキリとした。翔太の顔が今まで見たことがないほどの表情、怖い態度になったから。


「うちの姐さんに何か?」


そう言った彼はすでにコウさんに向かって険しく視線をロックオン。

迷いなく威嚇する。そんな表現がしっくりとくるほどに、翔太の顔からは笑顔なんて存在しない。



「ずいぶんと威勢がいいんだな」

「あっ?」

「いや、俺はただ、近くにいた彼女が落とし物をしたから、それを拾って渡そうとしただけですよ」


それを証明するように「どうぞ」と、コウさんが私に向かって他人行儀に赤い物体を手のひらに乗せる。


い、いつのまに手にしたんだろう……。

それは間違いなく私の携帯で、鮮やかな赤のカバーが特徴的なそれは今羽織っているパーカーの右ポケットについさっきまで入っていたものだ。