愛情の鎖


だけどそれは一瞬、すぐに意味深い顔をしたコウさんがなぜかかがみ、挽き肉を取るふりをして顔をグッと近づけてきた。



「ちょっとだけかよ…」


そしてチュッと落とされた唇の甘い痺れ。

それがキスだってことに気付いた時には、もうすでに顔が離れていったあとで、


「これ、欲しかったんだろ?」


回りには人がまばら、こっちを見ていない事をいいことに、彼はさも自然な仕草で私に向かってニヤリと挽き肉を見せてくる。

小声で囁きながら、私のかごにそれを入れた表情はまるで悪魔、いいや悪の大魔王だ。



「なっ!」


一瞬にして顔が青ざめた私は、キョロキョロと辺りを見渡してしまう。

「何するのよ!」と小声で捲し立てれば、コウさんは今したことなんてなかったように涼しい顔して私の頬をスルリと指で撫でる。

まるでスリルを楽しんでる。

そんな行動に私の心臓は一気に10才ぐらい縮まった思いだったけれど…