愛情の鎖


「お前、いい声してんな……」


それがコウさんの第一声。不意にかけられた声にあの時の私が心底驚いたのを今でもはっきり覚えている。


………だ、れ?


此処には誰もいないはずなのに。ビックリして振り返った瞬間、その人物を視界に捕らえた私は目を見開いて固まった。


どこから入ったんだろう…

見知らぬ顔に正直恐怖さえ感じた。宗一郎さんのお友達?

いや、違う。彼は今までこの家に私以外の他人を入れることを極端に嫌ってる。例えそれが宗一郎さんの組の人でさえもだ。


だとしたら、この人は…



「ああ、別に怪しいもんじゃねぇから安心しろ」


いやいや、十分怪しいと思うけど…

上下黒のスーツを身にまとった彼はとてもじゃないけど普通の一般人には見えない。しかも顔つきもお世辞にも優しく爽やかだとも言えない。

むしろ宗一郎さんと同類のオーラを醸し出しているから、私は余計警戒心を強くした。