「じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい」
私は宗一郎さんを見送ると、いつものように作っていた笑顔を真顔に戻す。
宗一郎さんの後ろ姿、少し前まではあんなに重たい気持ちでしかなかったのに今は少し違う。
体が驚くほど軽い。
作り笑いも簡単にできる。
毎日苦痛でしかなかった生活がパッと明るさを増していた。
「よかった。今日もずっと晴天で」
ベランダの窓を開けながら、私は夕暮れの空に向かって大きく深呼吸した。
私の中で今までにない希望の空気を吸ってるような気分だった。
『お前が望むならあの男から解放してやるよ』
それは先日コウさんから言われたまさかの光。
思いがけない彼からの告白。
『明日もお前に会いたい』
それを思い出すと、今にもあの温もりが甦ってきそうだった。