「最初から友達だなんて思ってない」
「…そ、んな……」
信じられない。
だからさっきあんなにあっさり身を引いたの?
お前の好きにしろって、さもどうでもいいかのように私のことを突き放したの?
「あのままだったら、こうしてお前をまともに口説けねーだろ」
「で、でも、ガキには興味はないって、私のことなんて恋愛対象外だって……」
「悪いが俺も事情が変わった」
「えっ……」
「お前が欲しくなった」
コウさんがそう言って椅子から立ち上がる。
少し怖いぐらいのその立ち振舞いに、全身が金縛りにあったように動かない。
「梨央」
「…っ……」
コウさんが私との距離を詰めようとしたから、私はたまらずよろっと、よろけるようにして一歩下がった。
だけどそれを埋めるように、コウさんの足もまた私を追い込んでくる。手を捕んだまま、私を逃がそうとはしない。



