……コウさん?
やっぱりいつもと違う。こんなフレンドリーな彼は初めて見る。
再び私から炒飯に顔を向けたコウさんの横顔をじっと見つめると、やっぱり得たいの知れない感情が押し寄せる。
ああ…、まずい。
苦しい、な。
心臓が押し潰される感覚に、私はたまらず左手で胸元を握りしめる。
もうこれで十分だ。
十分だよ。
これ以上は望んじゃいけない。
私の作った料理を美味しいと食べてくれる姿が最後にもう一度見れただけで満足だよ。
それに思わぬ間接キスもした。もう思い残すことは何もない。
だから、私は覚悟を決めた。
「……じゃあコウさん、私はこれで。もう…行くね」
そう言ってコウさんから背を向けようとすると…、何故か体が動かなかった。
ううん、正確には動かせなかった、と言ったほうのがいいのかもしれない。
背を向けようとした瞬間、コウさんの手が私の腕を素早くガッチリと掴んだから。



