コウさんの意図がわからないまま、私はとりあえず包丁を手に取った。
彼の考えてることが分からない。……でも、今日で最後、だ。
これで最後だと思うと渋々ながらも、気持ちが次第に前に動き出していく。
どうせ作るなら美味しいものを作ろう。
コウさんが満足してくれるものを作りたいな。
そう思った私は今ある材料で炒飯を作った。幸いなことによく見たら、冷蔵庫の片隅に卵も2つほどあった。
そうして他に簡単な野菜スープも作ると、何だか気分も楽しくなってくる。やっぱり料理は楽しい。
それが好きな人の為だと思うと尚更だ。
「よし、できた!」
お皿に盛り付けると、満面の笑みが浮かぶ。
この短時間でよくやったもんだと我ながら誇らしくなる。とりあえず味も大丈夫。これならコウさんも喜んでくれるかもしれない。
そんな期待を込め、ようやく顔を寝室の方に向けた時だった。
「ずいぶん楽しそうだな」
「わっ!」
驚きの声を上げた。
いつの間にいたんだろう。
コウさんが腕を組み、寝室のドアに背を持たれるようにして真っ直ぐこちらを見ていたのだ。



