愛情の鎖


「ごめんなさい」

「それはつまり、俺との友達関係をやめたいってことか」

「事情が変わったの。勝手で申し訳ないんだけど、そうしてくれたら助かります」


私はコウさんの目が見れなかった。

目を見たら最後、視線が合わさったら最後、私の瞳からは自分でも押さえられない涙が出そうだったから。


「ふーん」

「これ以上コウさんにあまり迷惑をかけたくないの」

「迷惑、ねぇ……」

「きっとこのまま私と親しくしたらコウさんにもっと嫌な思いをさせちゃうかもしれない。私の夫…、宗一郎さんって言うんだけど、彼を怒らせるとちょっと怖いの。正直普通の人とは少し違うっていうか、彼と一緒の時は昨日みたいにコウさんに会っても挨拶もできないし」


だからごめんなさい。

今までありがとうございました。

少しの間だったけど、私みたいな女と仲良くしてくれて嬉しかったです。


そう精一杯の態度で伝えれば、返ってきたのはコウさんの怖いぐらいの無言。

やけに静かな沈黙だと思った。

不思議に思い、思わずチラッとその横顔をみればなんとも読みがたい表情を醸し出している。