愛情の鎖


「たくっ、くだらねぇ……」


そう言って、コウさんが煙草を一本取りだし、口に加える。
いつも使ってるライターで火を付ける仕草を見つめながら、私は彼に気づかれないように目元を緩めた。


……もう、こんな姿を見られるのも今日で最後なんだなぁ。

いつも見てた何気ない風景。それなのにどうしてか愛しくてたまらない。
煙草を吸うコウさんの口元、そして煙を吐くときの細目られる瞳。

見れば見るほどはまってく。

コウさんってやっぱり格好いい。

クールで大人で色っぽくて、愛想はけっしてよくはないけれど、苦しくなるほどコウさんに魅了されてく。

いっそ「好き」と言えたらどんなに楽なのだろう。

今の気持ちに正直になれたら、どんなに幸せなのだろう。

一度でいい、その大きな腕に抱きしめられたい。コウさんの体温に触れてみたい。

じわじわと、そんな切ない感情が胸を締め付けていき、目を伏せる。
私はたまらず下唇を噛み締めた。



「ねぇ、こうさん?」

「なんだ」

「やっぱり…、前に言ったことは無しにしてほしいです」


それでも私は拒絶する。

もう終わりなの。

友達になんてなれる訳がない。

これ以上好きになったら最後、私は本当に彼から離れられなくなってしまうから。