愛情の鎖


「あの、昨日はごめんなさい。どうもありがとうございました」

「ああ、もう体調の方はいいのか?」

「うん、昨日一晩寝たらスッキリ、今日はすこぶる調子がいいの」


「そうか」と言ったコウさんがうっすらと目を細める。

良かった、何とか普通に話せてる。私は内心安堵した。

それから持ってきた紙袋を思い出したように前に出すと、彼に向かってどうぞとばかりに腕を伸ばした。


「あの、これ昨日のお礼です。良かったらどうぞ」

「へー、何?」

「えっと、ティラミス、かな。食べられそう?」

「ああ」

「良かったぁ、唯さんの分も作ったの。よかったら二人で食べて」

「ふーん、これ梨央が作ったの?へー、美味そうじゃん」


中身を開けたコウさんが関心の声をあげる。


「私、こう見えてお菓子作るの得意なの。普段、これぐらいしかやることがないからさ」


宗一郎さんと結婚して私は料理が一段と上手くなったと思う。

彼がいない間、私は本当に暇だった。自由に外に出掛けられない分、私の唯一の楽しみはキッチンに立つことだけだったから。