愛情の鎖


まただ…

ドクンと、感情が前に出る。

真っ直ぐ定められる真剣な瞳。

コウさんの手は、熱くなった私には気持ちいいぐらいにひんやりとして冷たくて、思わず戸惑いを覚えるほど。


「あの、私……」

「エレベーターで意識を失ったんだ。熱はなさそうだったからとりあえずうちに運ばせてもらった」

「そっ、か。迷惑をかけてごめんなさい」

「いや…、それより大丈夫か?」

「えっと…、多分貧血だと思います。今、あの、ちょうどあれの2日目なので」


私はたどたどしくそう言った。

すると、コウさんは一瞬考える素振りを見せたが、すぐにああ、と納得したように頷いた。


「なぁんだ。良かったぁ。ただの貧血で、私はてっきりお腹に赤ちゃんでもいるのかと思っちゃった」


ふふふっと、はにかんだショートカットの女性がホッとしたようにコウさんの隣に歩み寄る。

その表情はやっぱりキュートで思わず見とれてしまうほど。



けど、赤ちゃんって…

思わずビックリしたが、普通の人からみたらそう思われてもしょうがないのかもしれない。

私は結婚してるし、子供の一人ぐらいいたっておかしくはない状況。


……でも、それはとんだ取り越し苦労だと思った。

だってそれは、私には一生縁がない言葉だから。