愛情の鎖


ーーー…


それからの記憶はほとんどない。

あれからどのぐらい眠ったのか、ふと私が目覚めるとそこは見覚えのあるベッドの上だった。


「あ、気が付いた?」


上から覗くように、大きな瞳が視界に写る。

まるで重病患者が目覚めた時のように、安堵の顔を向けられる。


「よかったぁ、大丈夫?今晃一呼ぶから」


そう言って一目散に扉をあけ、コウさんを呼ぶ声を聞きながら、ようやく此処がコウさんの部屋であることに気付く。

そして彼女が誰なのかも……

そこまで思い出すと、私は今までにない複雑な気持ちに襲われた。


「梨央」


声がしてビクンと体が硬直する。

思わず体を起こそうとすると


「何してる?まだ勝手に起きるな」


コウさんは私を素早く制止した。

肩を捕まれ、再び寝かされた時、視界いっぱいにコウさんの顔が映りこむ。

その時、また息苦しい感情が顔を出した。


「まだ、顔色が悪いぞ」

「あの、ごめんな、さい」


迷惑をかけて…

そう言いかけた時、コウさんの掌がピタリ、私の額の上に重なった。