体から血の気がサーっと引いていく。
何が面白いのだろうか?
翔太の満足そうな顔をみつめながら、ふつふつと悲しい感情しか出てこない。
「……でも、元を返せば借金の根元は宗一郎さんの組織でしょ?」
「それでも、金に負けたあいつらが悪いんで」
「えっ?」
「姐さん、所詮この世は強い者が勝ち、弱いものが負けるんですよ。つーか、それ以前に借りた金はきっちり返さなきゃ。それがこの世の中のルールってもんでしょ」
あ……
ドキリと、額から冷や汗が出る。
それは私自身、身にしみてよく知っている言葉だった。
……でも、
正論を言ってるようにみえるけど、どうしても悪意にしか聞こえない。
むしろ恐怖が増していき、翔太の顔を思いっきり複雑な顔をして見てしまった。
「何か言いたそうな顔っすね」
「…別に……」
「なんならもっと続きの話しもしましょうか?」
「いや、もういい。部屋に帰るわ」
これ以上は聞きたくなくて、翔太の顔を見ずにそう言った。
まるで目の前の翔太が血の通わない悪魔のように見える。
それはまさにこの裏の世界を知り尽くした非情な表情そのもので。
いつもへらへら笑ってるくせに、これが彼の本当の正体だということを改めて思い知る。



