愛情の鎖


翔太が感情のない瞳で私を見る。

声だけはいつものおどけた口調だけど、思わずゾッとするような視線だった。


「むしろ居なくなってホッとしたっていうか……」

「それって何歳ぐらいの、時?」

「たしか15ぐらいじゃなかったすかね。正直俺もその時かなり荒れてたし、いつ死んでもいいって思ってたからはっきりしたことは忘れちゃいやした」


ニコッと表情を変えた翔太に、大きなショックを受ける。

それから翔太は顔色をかえる私をよそに今に至るまでの経緯を何事もなく淡々と話してくれた。

それらの話しは正直私にはかなりの衝撃で、思わず耳を塞ぎたくなるような現実。


「ま、でもあの時頭に会って拾ってもらわなかったら今の俺はいなかったっすね」


『お前はいい瞳をしている』
『バカな親に復讐したいか?』


「その言葉がなかったら俺は確実にその辺でとっくにのたれ死ん出たと思うので」

「……だから、本当に親に復讐したの?」

「そっすよ。あの後手当たり次第で両親を見つけた時、俺の中に芽生えたのは家族の愛情じゃなく、ましてや哀れみでもなく、醜い憎悪しかなかったんで。
俺自らが金の取り立てに行った時のあの人達の顔を思い返すと今も可笑しくて笑いが込み上げてきやすね。

「翔ちゃんお母さん達を裏切るの!?お願いだから見捨てないで!」

今まで俺にしてきたことなんて忘れて、それまで散々俺を見下し、下僕のような扱いをしてきた奴がどの面下げて言ってんだって。
思わずヘドが出るほどげんなりして、思いっきり蹴り飛ばしてやりました」