愛情の鎖


「気のせいじゃない?」

「そうっすか?」

「ねぇ、翔太はなんでこの世界に入ったの?」


この世界とは、いわゆる宗一郎さんの組織という意味だ。

思わず口から出た言葉に正直自分でも驚いたが、出ちゃったものはしょうがない。そのまま無表情を突き通して少し驚いた顔をした翔太の返事を待った。


「なんっすか急に」

「別に、何となく……」

「…まぁ……、そおっすね。簡潔に言えば親に復讐したかったってやつっすかね」

「……えっ?」


逆に私が驚ろいた顔をすると、翔太はふっと少しだけ遠くを見るような素振りをし、急に見たことがないような真面目な顔をした。


「俺、捨てられたんすよ。親に」

「えっ……」

「俺の親父もお袋もろくに仕事もしないで毎日ギャンブル三昧な人で。そんな人達が作った借金がついに膨れ上がってどうにもならなくなった途端、俺を一人残して二人ともドロン。
学校から帰った俺を待ってたのは莫大な借金と、柄の悪い金貸し業者ってやつっすかね」

「…そ、んな……」

「まぁ、別によくある話しっすよ。元々俺、あの人達のお荷物的存在にでしたからね。産んだのは間違いだった。あんたと一緒に居ると気分が悪くなるってずっと言われて育ってきたし、むしろ殺されずに生きて来れたのが奇跡だと思ってやすから」