愛情の鎖


「梨央、世の中は金だ」


3年前宗一郎さんに言われた言葉を思い出す。


『この世はすべて金と権力だ。いくら綺麗事並べても所詮は甘っちょろい戯言。飯は食えないし、自分のやりたいことなんかできやしねぇ』

『悔しかったら金に負けた両親を恨むんだな。憎かったら俺以上の力をつけてみろ』


悔しくて、涙がポタポタと出た。

その時、私は産まれて始めて自分の惨めさを知った。

そしてこの18年間私はどれだけ父と母の大きな愛情に守られてきたのかも知った。

とても無力だと思った。

何も言い返せない自分が。何もできない自分が。

悔しくて、悔しくて…

泣くことしかできない自分がとても歯がゆくてどうしようもなかったのだ。



「着きましたよ」


翔太の声で私は窓の外からハッと顔を前に向ける。

気が付けば車はいつものマンションの場所に停車され、翔太の心配そうな顔が視界に入る。


「大丈夫っすか?」

「え?」

「さっきから声かけても生返事ぽかったんで」


いつもながらに翔太の観察力は鋭い。

前から思ってたけど、翔太って普段鈍感なくせして人の顔色を読み取る力だけは結構なものを持ってるんじゃないだろうか?