愛情の鎖


だけど、宗一郎さんから特にそれ以上聞かれることはなかった。
チラッと横顔を見れば別に普通。コウさんのことは特に気にとめてない様子だった。


「赤坂のアークスまで頼む」

「分かりやした」


車に乗り込むと運転手の翔太が嬉しそうにエンジンをかける。

良かった……

とりあえず宗一郎さんには何も感ずかれずにすんだみたい。
ホッと胸を撫で下ろす。


……だけど、さっきから痛むこのキリキリとした感覚はなんだろう。

またコウさんに対して赤の他人のふりをしてしまった罪悪感?

それともコウさんに冷たくあしらわれてしまった喪失感?

どっちにしろよく分かったのはコウさんとの関係はあくまでも曖昧で、普通の友達のように外で気軽に挨拶すらできない間柄だってことだけ。


また…、孤独になった気がした。

せっかくこの前のことでコウさんとの距離が縮まった気がしたのに、実際は何も変わっていない。

宗一郎さんがいる限り私はずっと一人。

一喜一憂していた自分が恥ずかしい。

こんなの分かっていたはずなのにね。

所詮私は宗一郎さんのペット。

愛情のない鎖に繋がれて、一生ひっそりと彼のよき妻を演じなきゃいけない立場なのだ。