愛情の鎖


もしかして朝帰り?

今帰って来たのだろうか?

しかも何でこんなタイミングなんだろう。

ハラハラ、ドキドキと胸の鼓動を高めながらお互いの距離が少しづつ縮まっていく。


どうしよう…

このままじゃあ間違いなく鉢合わせしてしまう。
現にコウさんだって私達の存在に気づいてないわけがない。

その証拠に何となくコウさんに見られている感じがする。

だけど、宗一郎さんがいる手前気軽に話すこともできない。

そして一歩一歩距離が縮まっていき、ついに緊張がピークに達した瞬間…







「ーーーーっ」



すれ違う寸前、結局私はコウさんから顔を反らしてしまった。

一瞬目があった気がしたけど、コウさんの方からも何も反応もない。

むしろ冷たくあしらわれた気がして、胸がヒリヒリと擦れたような痛みがした。


「見かけない顔だな」

「えっ?」


マンションを出る寸前宗一郎さんが私の顔を見て言った。


「あんな奴このマンションに居たか?」

「……さぁ?どうでしょう……」


上手く濁した感じに言ったつもりだけど、大丈夫だったかな?

もし、次に何か聞かれたら動揺で上手いことを言えるか分からない。