愛情の鎖


現にあれから宗一郎さんの服からはあの匂いはしなくなった。

するのは前から付けている私が苦手な宗一郎さんの男臭いお決まりのものだけ。



「洗濯は終わったか」


電話を終え、洗濯も一段落した頃宗一郎さんが私のいるベランダに顔を出した。


「出掛けるぞ」

「えっ?」

「どうせ暇だ。たまには朝飯でも食べに行こう」


すでに宗一郎さんの準備は完璧だった。

翔太にも連絡済みのようで、もうマンションの外で車を待機してくれてるみたい。


「梨央も早く支度しなさい」

「……はい」


宗一郎さんはいつも急だ。

私の意見は聞かず、自分がやりたいことを押し付けてくる。

せっかく朝ごはん作ったのに…

それが全部無駄。朝から頑張って作った自分がちょっと悲しい。

…だけど、こんなことは日常茶飯事。私はいつもそんな彼の行動に付き合わなければならない。


「何処に行くんですか?」

「どうせなら上手い肉でも食べに行こう」


肉……

朝から肉って、そんなガッツリとしたもの食べられるかな?
あのこってりとした味を想像すると、何だが胃がムカムカとする。