「今から作って持って行こうと思うんだけど、大丈夫?」
「ふ〜ん」
「ふ〜んて、ダメなの?もし良かったらリンゴもあるから切ってくるけど」
立ち止まり、コウさんの顔を覗き込むと何故かまじまじと見つめてくる。
その顔はやっぱり「お節介」とも読めるし、「どういう風の吹き回し?」といったふうにも読める。
「へー、じゃあお言葉に甘えて。けどどういう風の吹き回し?旦那はほっといていいわけ?」
そう言われ、やっぱりかと思いながら私は淡々と言葉を投げる。
「別に大丈夫。どーせ今日も帰って来ないから」
むしろ帰って来ないほうがありがたい。
宗一郎さんの相手をするぐらいなら、コウさんの看病をしていた方がよっぽどか楽だもん。
すると、コウさんが少し意味深な顔をしてドアの取っ手に手をかけた。
「ふ〜ん、じゃあよろしく」
「オッケー。じゃあ後で、ちゃんと寝てるんだよ!いい?すぐ行くから」
別れ際、屋上から行き来していいことの承諾を得た私は再び急ぎ足で自分の部屋へと戻った。
直接玄関からにしなかったのは、うちのリビングや玄関に監視カメラが付けられているため。
宗一郎さんに感づかれないようにするにはその手段が一番安全なのだ。
私はキッチンに立つと、腕の袖を捲りあげ、ルンルンと気合いを入れる。
よーし。そうと決まったら。
頑張るぞっと!



