愛情の鎖


「へー心配してくれたんだ」

「知らない。もうコウさんには電話しない」

「ふっ」


気の抜けたような声が耳の中をつく。体調悪くてもコウさんの嫌味は健在だ。

感じ悪いのにもほどがある。


「元気そうじゃない」

「ああ、まぁな」

「熱下がったの?」

「さぁ?計ってないから分かんねー。とりあえず薬は飲んだけど」

「いい加減…これだからおじさんは。ちゃんと寝てる?今何してるの?」


そういいながら、この時直感的に嫌な予感がした。

この様子からしたらきっと私の思ってるような答えは返ってこないって。


「煙草吸ってる」

「…煙草?何処で?」

「あー……屋上で」


やっぱり…

てか、屋上って何?

予想よりも遥かに上回るおかしな答えに素直に驚く私。

聞いた私がアホだった。


「コウさんってバカなの?」

「は?」

「いくら夏だからって風邪引いてる時に普通そういう行動とらないでしょ」


これだからおじさんは……

いい加減。何考えてるのか分からない。

少し間をおいて「ほっとけよ」とぶっきら棒に言ったコウさんに私はことごとく深いため息を吐く。