「すみません。
ほんとはどこかで手土産を買うつもりでいたんですけど、思いつかぬまま着いてしまって」

手ぶらで来たことの非礼を詫びた。

「いいの、いいの。
料理はもう準備してあるし、ギネスビールもちゃんと冷やしてあるから」

「え、サトルさんが料理を作ったんですか?」

「そうだよ。だって他に誰が作るのさ。手の込んだものじゃないから気にしないで」


俺は料理などまったくできないから、素直に感心してしまう。

そんな考えを見透かしたのか、サトルは話し始めた。

「ははは、一人身が長いからね。
昔は僕も外食が多かったんだ。
コンビニ弁当もしょっちゅう。
あれって栄養のバランスが悪いでしょう?だから、サラダだけは毎回自分で作るようにしたんだよね。それで、いつの間にか料理も。簡単だよ、料理なんか」

大きな橋を渡る。

遠くに高層マンションが立ち並ぶのが見える。
夜はきっと夜景がきれいなんだろうな。

「ここだよ。僕のマンションは」

茶色い外壁の、高級感溢れるマンションを見あげた。