何度かのメールのやり取りで、サトルさんの全体像がおぼろげながら見えてきた。

貿易関係の会社員であること。

離婚歴があり、前妻と一緒に暮らす男の子がいるということ。

自分がゲイであることが離婚原因だということ。

俺と同じく音楽と映画が好きだということ。

海外への転勤が多く、英語が堪能だということ。

知れば知るほどミステリアスな人だった。

印象としてはダンディであり、とても紳士に思えた。

「一度お会いしませんか?」
誘ったのは俺の方からだった。

待ち合わせに選んだ場所は渋谷。
学生時代から慣れ親しんだ街。
ここなら熟知している。

火曜日の午後7時半。
待ち合わせの映画館の前でその人は立っていた。

胸元にPOLOのロゴが入ったブルーのYシャツ。
グレイのスラックスにはきれいに折り目が入っている。

「やあ、君がユージかい?」

軽く手を上げた男性は、石田純一のような素敵な笑顔の持ち主だった。