「それってさシュウジ、言いにくいんだけどさ、インポってこと?」


俺は飲んでいたウーロン杯を吹き出した。


渋谷駅近くのビルの4階。
和食がメインのおしゃれなBAR。

窓から階下を見下ろすと、車のライトや店のネオンが雨で滲んで、道を歩くたくさんの傘の花を綺麗に照らしている。

誘ってきたのはアケミの方からだった。

予定していた会社の飲み会が中止になり、急遽俺のケータイにメールをしてきたわけだ。

「今夜はテニススクールの日だから、10時くらいになるぜ」

「10時?あたしを5時間も待たせるっていうの?
そのテニスを他の日にずらせばいい話じゃない」

数通そんなメールをやり取りした。

アケミは昔から自分の意見を押し通す。

ま、押し通されてしまう俺も弱いのだが。


「ば、ばか、声がでかいよ。インポじゃねーよ。ちゃんと勃つし」

「だって奥さんとできないんでしょう?」