「ナイッシュー王子!文句なしのシュートだったな!」
「うるっせーよてか王子ってやめろ!」

・・・男子達の声が校庭に響き渡っている。
この炎天下のなか、何故あんな元気に走り回れるのだろうか。
完璧インドアで運動とは無縁なぼくからしたら、理解がとってもできなくって。


まあ、女子も女子で炎天下のなか、きゃーきゃー応援してるんだけど。

もちろん、あの女子達は全員王子くんふぁんくらぶの人。



・・・あー、なんかもやもやしてしまう。

「ちょ、りっちゃんとんでもない顔してるよ!またそうやって焼きもちー。」

親友の声にわたしは我に返った。
「め、めーちゃんいつからいたの!?」
「はいこれあんたの好きなリンゴジュースね。」
「あ、ありがとう・・・じゃなくって!」
「今来たばっかり。それにしても相変わらずの人気だよね~光村、あんたも相変わらずの焼きもち屋だけど。」

最後のはほんとに要らないと思う。

光村っていうのは光村麗輝(みつむられいき)くんのことだ。通称王子、わたしは王子くんと呼んでいる。
ルックスおっけー成績おっけー運動おっけーな彼にはぴったりなあだ名だ。


「焼きもちしたって何にもならないってのはぼくだって知ってるよ。でも、成績だめだめ運動だめだめおまけにぶっさいくという何の取り柄もないぼくと王子くんは不釣り合いに決まってるだもん。」
「随分と長いね!?」

さすがつっこみ担当めーちゃんこと清水芽衣ちゃんである。




「あ、てかりっちゃん?」

「なに?」
真面目な顔するなんて珍しい。

「さっき、担任が呼んでたよ?なんか心あたりある?」
「あると言えばある、かも・・・。」

きっと、宿題の件だと思う。
思わず身震いをする、あの先生は怒ると怖い。


「さっさと行った方が「行って来ます!」はやっ!」

運動音痴のこのぼくが、光のように(自己満)廊下と駆けるなんてニ度とない。
それぐらい急いで宿題を持ちながら走ったのだ。