だが、僕はそうじゃなかった。

周りから言わせれば、僕は優しすぎる、らしい。

僕もそう思う。僕はきっと、鯉伴みたいに非情にはなれない。


だから、僕自ら継承権を破棄した。
まぁ、代わりに頭はずば抜けて良かったから、
参謀の位置についているわけだけど。


僕は見守ることが一番自分にあってると思ってる。
最悪、戦うこともあるけれど、滅多にしない。

だからリクオの継承についても反対しなかった。
リクオは鯉伴に似てる。
その意志は強く、総大将に相応しいものだからね。

僕なんかよりも、よっぽど奴良組を上手く扱えるはず。

ドタドタッ…!


とかなんとか思ってる間に皆が起き出したみたいだ。

と言うことは。その内、彼がやって来る。

「………鯉桜おじさん?起きてる?」

襖の向こうから、申し訳なさそうに声をかけてくる。
思わず口元が緩む。これももう、毎度のことだ。

「…起きてるよ。
遠慮せずに入っておいでと、いつも言っているだろう?」

ス、とこれも遠慮がちに襖が開かれる。
そこにいたのは、僕の大好きな子。
大切な弟の、大切な息子。僕の、甥。

「おはよう、リクオ。」

「おはよう、おじさん。」

リクオが僕のところにいつも来る理由。
それはいつも同じこと。
リクオが三代目を継いでから、毎日続いている。