「“奴”はどうやら礼儀はあるらしい。
…“奴”は、自らを“死神”と名乗った。
…西洋の妖怪として、この日ノ本を新たな領土にしようと乗り込んできたようだね。」


!!…西洋の妖怪が、領土拡大の為にこの国を…?

「し、しかし、鯉桜様!
そのような情報はあがってきておりませんぞ!」

「信じないと?この僕が言っているのに?」

ぐっ、と口ごもる幹部。

そして、次の瞬間だった。
兄貴の雰囲気が、変わった。

「思い上がるなよ、一ツ目。
何も情報があがっていないといって、実際に何も起きていないわけではない。
自らの過信は、災厄を呼ぶ。貴様もいい加減学べ。」

普段の兄貴が柔なら、今の兄貴は剛。
そう、まるで昼と夜のリクオのように。

ただリクオと違うのは、どちらも同じ人格だと言うことだ。


「…正直、僕は領土とかそんなものはどうだっていい。
勝手にしていろという話だ。
だが、そうなれば被害を受けるのは避けようもない事実。
僕はそれを許していないだけだ。
もし危害を加え、僕達の平和を脅かすのなら容赦はしない。
誰がなんと言おうと、僕はその根源を潰す。」

邪魔する者は排除すれば良いだけの話だ、と言う兄貴。

「…そうだな、叔父貴の言う通りだ。
ただ、まだ大きな被害が出ていないと言うのも事実。
下手に行動を起こして向こうの怒りを買ってしまうのも面倒だ。
とりあえずは様子見だな。
鴉は上空からの警戒と警備を徹底しろ。何かあればすぐ報告。
猩影と黒、化猫は地上を任せた。
氷羅と青は学校でその噂とやらに耳を傾けろ。
河童は水中を頼む。奴等はどういう属性を持っているか分からないからな。
後は他の組のもんにどう知らせるかだが…。」

「四国はワシと納豆小僧に任せろ。
ちょいと狸と話もしたい。」

四国へは親父と納豆小僧が行くことになった。
鴉は護衛はどうのこうの言っていたが、親父はいつものように聞く耳持たずにこの部屋を出ていく。