ここでコートを貸すとかさ、もう少しロマンチックなことしてくればわたしだって満足するんですよ?
そんなこと望んでも冷たくあしらわれるだけだから、言わないけど。
その代わりに違うことを言ってみる。
「まぁそうなんだけどどうしてここに来たかぐらい教えてくれたっていいじゃん――……」
遡ること数時間前。
ピーンポーン
「ゆーまー、暇だったから遊びに来たー」
わたし『ナデシコ』とあいつ『優真』の家は斜め前同士で小さい頃からの腐れ縁。
世に言う幼なじみってやつなんだけど、学校ではそこまで喋らなくて、たまにお互いの家を行き来するぐらい。
気は許しあってるけど、学校ではそれぞれの人間関係ってものがあるしね。
第一あいつがいるグループは少しヤンキーが入ったような人たちで、話しかけれる雰囲気じゃない。
わたしといるとき意外の顔を見せるあいつが時々寂しかったりもするけど、見れるのは嬉しかったりもするから五分五分ってとこかな。