『あれっ!あっ…、麻紀ちゃん帰るのっ?』
『ごめんね…、麻紀ちゃん!せっかく来てくれたのに…、えっと…。』



『大丈夫、大丈夫。』



私は左のイスに置いていたバッグを掴むと、笑いながら、


『ジュースはご馳走してくれるでしょっ?』

と言って、慌てて立ち上がろうとする雅之を手で制してから歩き出す。



カフェのドアに向かって5歩のところで、顔だけ振り返り、


『沙羅、後で電話してね』

と言って、また歩き出した。





『ありがとうね、麻紀っ!後で電話するぅ~!』





沙羅のいつもより1オクターブ高い鼻にかかる声が、私の背中の方から小さく聞こえたけれど、目の前の自動ドアに気持ち早めに踏み出して、そのまま勢いよく外に出た。