殺戮都市

抵抗しない俺を不思議に感じたのか、首を傾げる死神。


「……あの時の少年か?」


小さくそう呟いた死神に、俺は何とか首を縦に振った。


押さえ付けられて、動かすのもやっとだったけれど、死神はそれを見て、手を放してくれたのだ。


「けほっ……お、俺は殺さないんですね。死神って言われてるから殺されるかと思ったけど」


まあ、一度殺されてはいるんだけど。


あの時、この人はソウルはあるかと尋ねた。


あると分かったから殺したんじゃないかと、考えているうちにそう思うようになったから。


「勘違いするな少年。私に刃を向けた瞬間、死ぬ事になるのに変わりはない」


そう言いながら、脚に巻かれたホルスターにトンファーを納める。


皆は死神って言ってるけど……やっぱり俺にはそうは思えない。


やり方はどうかと思うけど、この街にいる人よりもよっぽど人道的に思えるし人間らしい。


「あの女の子……助けたんですよね」


ステージ上で、うずくまるようにしてガタガタと震える女の子。


「皆分かっていないんだ。どの軍に所属しているから敵だ味方だって……生き残る為に、本当にやらなければならない事から目を逸らしているんだ」


そう言って死神は、バベルの塔に顔を向けた。