殺戮都市

あまりに酷いこの現場から離れ、公園に戻った俺達。


人々の歓声と、女の子の泣き叫ぶ声を背中に浴びて。


「……あの女の子、どうなるかな」


考えたくもない事を、隣を歩く明美さんが尋ねた。


「分かりませんよ……まあ、あんなおっさんが好きなようにするなら……大体想像は付きますけど」


俺でさえ、奈央さんにスケベ心抱いてしまうくらいだから、あんなに煽られたらあの場所でも何だってやりかねない。


まだ聞こえる声から逃げるように、新崎さん達のいる場所へと戻って、俺は深い溜息を吐いた。


「どうだった?楽しい事なんてこの街にはないだろう?」


何が行われていたか、見なくても分かるといった様子で俺に問い掛けた。


「同じ人間なのに、所属する軍が違うだけであんなに残酷になれるんですね」


「そうじゃないわ。人なんて元々残酷なものよ。敵対するなら、味方にだってどれだけだって残酷になれるから」


奈央さんも……そう思う何かがあったのかな。


俺には分らないし、聞きたいとも思わない。


ただ、俺は俺の無力さを痛感する事しか出来なかった。


いつか出会ったあの死神くらい強かったら、あれを止められたのかな。