エレベーターは想像以上に速く、あっという間に塔の頂上と思われる場所に到着した。


扉が開くとそこは……小さな部屋。


まるで、どこかのワンルームマンションの一室のような雰囲気で、この塔とはミスマッチ。


「な、なんだよここ……ただの部屋じゃないか」


ベッドにデスク、パソコンに観葉植物……一人暮らしの部屋と言った感じで、それ以外の言葉が見付からない。


日本刀を持ってここにいる俺は、強盗か何かじゃないかと思ってしまうくらいに場違いだ。


「主は……どこだ!?」


こんな部屋を見せて、俺を惑わせるつもりかもしれない。


辺りを見回してみるけど……それらしい人物はどこにもいなかった。


一つ気になったのは、ベッドに誰かが寝ているようで、布団が盛り上がっているという事。


もしかして、寝ているのか?


俺達に殺し合いをさせておいて、主とやらはお気楽に眠ってやがるのかよ。


死んで行った皆の事を考えると、怒りが込み上げて来る。


俺はベッドに近付き、乱暴に布団を捲ると、そこに横たわる男を見下ろして日本刀を握り締めた。


こいつが……この街の、バベルの塔の主。


このまま日本刀を突き立ててやろうかと思ったけど……何か様子がおかしい事に気付いた。