伸ばした手は届かず、俺の目の前で床の上に転がる。


それでも、恵梨香さんに駆け寄って身体を抱え起こすと、俺は激しく揺すった。


「恵梨香さん、嘘でしょ……こんなに簡単に死ぬわけがないじゃないですか!中川もおっさんも、なんでこんなに簡単に!!」


今まで抑えていた涙が、堰を切ったように溢れ出す。


止めようとも思わず、ただ悲しみに身を委ねていた。


新崎さんに奈央さん、理沙、亜美、優……。


俺が死んでほしくないと思う人達は皆死んでしまった。


その都度悲しみを乗り越えて来たつもりだったけれど、俺はそんなに強い人間じゃなかった。


何かのせいにして、悲しみを怒りに変えて何かにぶつけていただけだ。
















「さあ、主の元に案内しよう。私に付いてくるが良い」



















深い悲しみの中、聞こえたその声に、俺は我に返った。


悲しみが消えたわけじゃない。


涙が止まったわけじゃない。


俺は、恵梨香さんをそっと床に寝かせると、その場に立ち上がってクイーンを睨み付けた。


そして……。










素早く空間から引き抜いた日本刀で、クイーンの首を刎ね飛ばしたのだ。