殺戮都市

その中から現れたのは一人の女性。


小さくも大きくもなく、細くも太くもないどこにでもいるような。


この人物が……バベルの塔の主なのか?


何と言うか、拍子抜けした感じだ。


本当に普通過ぎて、その外見が全く印象に残らないほどに。


俺と同じ事を恵梨香さんとおっさんも思っているのだろう。


見ただけで分かった緊張が……肩の力がフッと抜けたのだ。


だけど……日本刀の中の狩野はそうではなかった。


激しく、俺の手から離れようとするほどに震え始めて、女性に向かおうとする。


「お前はこの塔の主か?この街を……あのアプリを作ったのはお前か?もしもそうなら、こんなくだらない事は辞めて全ての人間を元の世界に戻すんだ」


当初の目的である街からの解放。


それをエレベーターから降りた女性に伝えたけれど、女性は眉一つ動かさずに、冷たい眼差しを俺達に向けている。


何か……不気味な物を感じて仕方がない。


恵梨香さんの言う事など聞く耳を持たないといった様子で。


「……返事がないけどどうする?」


今まで街で出会ったやつらは、敵だと分かると問答無用で襲い掛かって来た。


だけどこの女性にそれはない。


俺達のが迷うには十分な程の沈黙だった。