殺戮都市

「おい……酒がねえろ。もっと注げ」


ろれつが回っていない中川が、グラスでトンッとカウンターを叩く。


「何言ってんの。まだ殆ど残ってるじゃない!飲んだか飲んでいないか分からないなら飲まなくても良いんじゃない?」


「うるせぇ。客の言う事が聞けねぇのか」


顔を上げて、殆ど瞼が開いていない目で大山田を見る。


その顔に、かつての勇猛な中川の姿は……なかった。


「もう!こんな客はこっちから願い下げよ!それよりあんた。珍しいお客さんが来てるわよ」


ベロンベロンに酔っ払った中川に、大山田が指差して見せる。


何が何だか分からない様子で、中川が俺達を見ると……全く表情を変えずに、グラスの酒をクイッと飲み干してそれをカウンターに置いたのだ。


「あー……北条と少年か。どうしたんら?いやいや、これは夢らな。おい大山田、夢なら文句言わずに注げ」


「……何なんですかこれ。ずっとこんな調子って、俺が目覚めるまでずっとこんなだったんですか?」


俺が尋ねると、大山田は大きな溜め息を吐き、チラリと恵梨香さんに視線を向ける。


「そうだな。私が言っても、大山田が言っても何も変わらないんだ。少年なら……もしかすると」