殺戮都市

走り去る怪物の背中を見ながら、俺は何があったんだと首を傾げる事しか出来なかった。


「助かった……みたいね。まさかこんな時間にポーンがうろついてると思わなかったわ……」


フウッと安堵の吐息を漏らして、俺の肩に手を置く奈央さん。


詳しい事を何も知らない俺は、あれが正常なのか異常なのかすら分からない。


だけど、奈央さんが助かったと言うなら助かったのだろう。


「あ、のんびりしてられないわ。真治君は怪我してるんだったね。何処かに隠れなきゃ……」


俺の左腕を気遣ってくれているようで、辺りをキョロキョロと見回し、俺の手首を掴んで歩き出した。


どこに行こうとしているのかは分からないけど、付いて行くしかないか。


怪物を殺す事は出来なかったけど、追い払う事は出来た。


たったそれだけの事なのに、ドッと疲れが押し寄せる。


「な、奈央さん。戦闘が終わるのならそんなに急がなくても……もっとゆっくり……」


まだ膝が震えていて、思ったように歩けない。


「何情けない事言ってるの!戦闘が終わるって事は、侵攻した東軍のやつらが引き返して来るのよ?そんな怪我をしてて、そいつらと鉢合わせしたら殺されるよ!?」