殺戮都市

隣にいた奈央さんも、俺と一緒に地面に倒れ込む。


如何ともし難い力の差を前に、勝てる気なんて全くしない。


だけど……そんな俺の前に、ドサリと怪物の腕が落ちたのだ。


「グギャアアアッ!」


痛みを感じているのか、鮮血をまき散らせながら悶える怪物。


自分自身の力で、鋭い刃に攻撃を加えて自爆したのか。


いや……相打ちと言った方が良いのかもしれない。


立ち上がろうと、左手を地面に突こうと思ったら、全く力が入らないのだ。


肩が潰されたように痛み、油汗が顔中に噴き出しているのが分かる。


「いたた……真治君、大丈夫!?」


慌てて起き上がった奈央さんは、対した怪我がなくて何よりだ。


「腕が……折れたかもしれないです」


刀の背が腕に食い込んだ感覚が今になり、痛みとなって襲って来る。


「こんな時に……ほら、立ち上がって!」


怪物が悶えている間にと、俺の右肩を抱え上げる奈央さん。


勝てるはずがないと諦めていた怪物を、殺せるかもしれないチャンスが訪れた。


腕の一本が折れてたってなんだ……死なずに勝てるなら何だってやってやる。


人を殺す覚悟なんてまだ出来ていないけど、怪物を殺す覚悟は出来た。